全国展開奮闘記 #1|ケアマネが一人で抱え込まない居宅介護支援事業所をつくる
かいごの窓口を山形から全国へ広げていくための奮闘記、第1回。拠点を増やす前に、まず「ケアマネジャーが一人で抱え込まない居宅介護支援事業所」をどうつくるか。その考えと現在地をお伝えします。
執筆:かいごの窓口 代表 三浦 遼

かいごの窓口を、山形から全国へ広げていきたい。
この目標を言葉にすると、事業所の数を増やしていく話に聞こえるかもしれません。
しかし、名前の同じ事業所を全国に増やすことだけが、私たちの目標ではありません。
どの地域でも、介護について安心して相談できること。 ケアマネジャーが、利用者さんやご家族と向き合う仕事を大切にできること。 地域が違っても、働く人が一人で悩みを抱え込まないこと。
こうした状態を一つずつ形にして、初めて「かいごの窓口が広がった」と言えるのだと思います。
この「全国展開奮闘記」では、完成した成功事例だけを紹介するのではなく、全国へ広げるために考えていること、実際に変えたこと、まだできていないこと、次に取り組むことを綴っていきます。
第1回のテーマは、「ケアマネジャーが一人で抱え込まない居宅介護支援事業所」です。
全国へ広げる前に、働くケアマネジャーの環境をつくる
居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーがいなければ成り立ちません。
どれだけ看板やシステムを整えても、目の前の利用者さんやご家族と向き合うのは、一人ひとりのケアマネジャーです。
だからこそ、全国展開を考える上で最初に向き合わなければならないのは、拠点の増やし方よりも、「ケアマネジャーが安心して働き続けられる環境をどうつくるか」だと考えています。
ケアマネジャーの仕事には、正解が一つではない場面が数多くあります。
ご本人とご家族の希望が異なる。 医療と介護の間で調整が必要になる。 使える制度や地域のサービスを組み合わせて、現実的な支援を考える。 状態が変化する中で、これまでのケアプランを見直す。
同じように見える相談でも、生活環境や家族関係、地域の資源によって、必要な支援は変わります。
経験を重ねたケアマネジャーでも、判断に迷うことがなくなるわけではありません。
「担当者だから」と、一人で抱えてしまう
利用者さんを担当するのは、基本的には一人のケアマネジャーです。
担当する利用者さんのことを最もよく知っているからこそ、「自分が判断しなければ」「自分で解決しなければ」と考えてしまうことがあります。
周囲が忙しそうで声をかけにくい。 相談するほどのことなのか分からない。 こんなことを聞いたら、経験不足だと思われるかもしれない。
そうしているうちに、小さな迷いが大きな負担になってしまう。
これは、ケアマネジャー個人の性格や能力だけの問題ではありません。
日頃から相談できる関係があるか。情報を共有しやすい仕組みがあるか。相談した人が責められない文化になっているか。
事業所側が、そうした環境をつくれているかという問題でもあります。
利用者さんを一人で担当していても、判断や悩みまで一人で背負う必要はない。
それが、かいごの窓口で大切にしたい考え方です。
相談することを、特別なことにしない
私たちが目指しているのは、大きな問題が起きてから助けを求めるだけではなく、小さな違和感の段階で気軽に相談できる事業所です。
「この判断でよいだろうか」 「別の方法はないだろうか」 「前回と少し様子が違う気がする」
そう感じたときに、ほかのケアマネジャーや管理者へ自然に話せる。
経験のある人が一方的に正解を教えるのではなく、それぞれの視点を持ち寄り、利用者さんにとってより良い方法を一緒に考える。
相談することを弱さではなく、支援の質を高めるための当たり前の行動にしていきたいと思います。
かいごの窓口が求めているのも、何でも一人で解決できる人ではありません。
分からないことを相談できる人。 ほかの人の意見を聞ける人。 自分の経験を、仲間のために共有できる人。
そんなケアマネジャーが集まり、お互いの強みを持ち寄れるチームをつくりたいと考えています。
人間関係だけに頼らず、相談しやすい仕組みもつくる
「何でも相談してください」と言うだけでは、相談しやすい職場にはなりません。
支援経過や申し送りが担当者の手元だけにあり、相談するたびに最初から説明し直さなければならない。必要な書類が複数の場所に分かれ、状況を確認するだけで時間がかかる。
そのような環境では、気軽な相談は生まれにくくなります。
かいごの窓口では、CareSpaceを活用し、利用者さんの支援経過や申し送り、必要な書類を、事業所内で確認しやすい形に整えていきます。
AIにケアマネジャーの判断を任せたいわけではありません。
記録の下書き、書類の整理、情報を探す作業など、仕組みに任せられる部分を減らし、人にしかできない相談や判断に時間を使えるようにしたいのです。
システムがあるだけで、良いチームが生まれるわけではありません。
ただ、必要な情報を同じ場所で確認できることは、相談を始めるまでの負担を減らします。人間関係と仕組みの両方を整えることが、一人で抱え込まない事業所づくりには必要だと考えています。
まだ、完成しているわけではない
かいごの窓口も、すでに理想の環境がすべて完成しているわけではありません。
相談しやすい関係は、制度やシステムを導入しただけでは生まれません。日々の声のかけ方、ケースについて話す時間、管理者の関わり方など、実際に働く人と一緒に整えていく必要があります。
これから、現場のケアマネジャーの声を聞きながら、
- どのようなときに一人で抱え込みやすいのか
- どのような相談の場があれば話しやすいのか
- 記録や情報共有のどこに負担があるのか
- 復職する人が、どのようなことに不安を感じるのか
を一つずつ確認し、働き方と仕組みの両方を改善していきます。
全国へ広げるためには、どこか一つの事業所だけで成り立つ特別な方法ではなく、地域が変わっても再現できる形にしなければなりません。
山形で実際に試し、うまくいったことも、うまくいかなかったことも記録しながら、次の地域へつなげていきます。
最初の一歩を、ここから残していく
全国展開は、一度に実現するものではありません。
働くケアマネジャーの声を聞くこと。 小さな負担を一つ減らすこと。 相談しやすい関係をつくること。 その方法を、次の地域でも使える形にすること。
そうした一歩一歩の積み重ねだと思います。
この奮闘記では、かいごの窓口を全国へ広げていく過程を、できるだけ具体的に残していきます。
現在ケアマネジャーとして働いている方も、資格を持ちながら別の仕事をしている方も、かいごの窓口の働き方や、これからつくろうとしているチームに少しでも関心を持っていただけたら、いきなり応募する必要はありません。
まずは一度、気軽に話を聞きに来てもらえたらうれしいです。
次回は、ケアマネジャーが書類作業に追われず、利用者さんと向き合う時間を増やすために、かいごの窓口でどのような仕組みをつくろうとしているのかを綴る予定です。
かいごの窓口で働くことに関心がある方へ
現在ケアマネジャーとして働いている方も、資格を持ちながら別の仕事をしている方も、まずは仕事内容や働き方を知るところからで大丈夫です。
