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かいごの窓口の記録5

全国展開奮闘記 #6|型をつくっても、支援を一律にしない

居宅介護支援の業務を標準化しながら、利用者一人ひとりに合わせた支援をどう守るか。共通化する部分と、ケアマネジャーの判断に委ねる部分を整理します。

執筆:かいごの窓口編集部

全国展開奮闘記 #6|型をつくっても、支援を一律にしない

前回は、ケアマネジャーのOJTを教える人の経験だけに依存させないために、確認の流れや相談体制を共通にしたいと書いた。

そこで次に考えなければならないのが、業務を標準化することで、利用者一人ひとりに合わせた支援まで一律にならないかということだ。

チェック項目を増やせば、確認漏れは減るかもしれない。一方で、項目を埋めることが目的になれば、目の前の人の言葉を聴く時間や、その人らしい生活を考える視点が失われる可能性もある。

かいごの窓口でつくりたいのは、全員が同じ答えを出す仕組みではない。

必要なことを漏れなく確認できる共通の土台をつくり、その上で、一人ひとりに合わせて考える時間を増やす仕組みだ。

同じ困りごとでも、意味は一人ひとり違う

例えば、「一人で買い物へ行けなくなった」という状況があったとする。

歩くことへの不安が原因かもしれない。店までの交通手段がないのかもしれない。重い物を持てないことが問題かもしれない。家族に頼ることへ遠慮がある場合もある。

また、その人にとって買い物は、食料を用意するためだけの行為とは限らない。

店員との会話を楽しみにしていた。自分で商品を選ぶことを大切にしていた。家族の食事を考えることが、長く続けてきた役割だった。そのような背景があるかもしれない。

「買い物に支援が必要」という項目だけを見れば同じでも、必要な支援や本人が望む生活は異なる。

だから、確認項目を共通にしても、支援の答えまで共通にしてはいけない。

共通化したいのは、判断する前の土台

かいごの窓口で共通化したいのは、主に次のような部分だ。

  • 支援を考える前に確認すべき基本情報
  • 本人と家族の希望を分けて記録すること
  • 心身状態や生活環境の変化を確認すること
  • 緊急性や安全面に関わる情報の共有方法
  • 判断に迷ったときの相談先
  • 支援を決めた理由と経過を残す場所
  • 次回確認する内容を明確にすること

これは、ケアマネジャーの判断を縛るためのルールではない。

必要な情報を探す、同じ内容を何度も転記する、相談先が分からず一人で抱えるといった負担を減らし、本人の話を聴き、考えることへ時間を使うための土台だ。

ケアマネジャーに委ねる部分を、あえて残す

一方で、すべてを手順書にするべきではないと考えている。

どの順番で話を聴くか。本人が言葉にできていない思いを、どのように確かめるか。複数の課題のうち、何を優先するか。家族や関係者の意見が異なるとき、どのように合意をつくるか。

こうした部分には、ケアマネジャーの専門性と対話が必要になる。

判断の根拠を共有できるようにすることは必要だが、誰が担当しても同じ言葉、同じ提案になることが正解ではない。

共通の土台を持ちながら、目の前の人に合わせて考えられる余白を残すことが重要になる。

CareSpaceとAIは、答えを決めるためではなく、考える材料を整えるために使う

CareSpaceやAIも、利用者にとっての正解を自動で決めるためのものではない。

面談や記録に含まれる事実を整理する。過去の経過を見つけやすくする。確認できていない項目に気づけるようにする。関係者へ共有する内容の下書きをつくる。

こうした作業を支えることで、ケアマネジャーが本人の言葉を振り返り、支援の方向を考える時間を確保する。

AIがつくった文章をそのまま正解にするのではなく、人が確認し、必要に応じて直し、最終的な判断を行う。

仕組みに人を合わせるのではなく、人がよりよく考えるために仕組みを使うという順序を守りたい。

標準化できたかではなく、本人と向き合う時間が増えたかを見る

チェックリストや記録様式を整えると、それを導入したことで改善が完了したように感じることがある。

しかし、本当に確認したいのは、書類が揃ったかだけではない。

  • 利用者や家族と話す時間が増えたか
  • 担当者が迷いを相談しやすくなったか
  • 支援を決めた理由をチームで確認できるか
  • 本人の希望が記録やケアプランに反映されているか
  • 仕組みが現場の負担を増やしていないか

ここまで見なければ、標準化が支援の質につながっているかは分からない。

運用しながら、不要な項目は減らす。分かりにくい流れは変える。現場で生まれた工夫は、他の拠点でも使える形にする。

型を守ることではなく、よりよい支援につながるように型を改善し続けることが必要だ。

全国で共有するものと、地域に委ねるもの

かいごの窓口を全国へ広げるためには、事業所として大切にする考え方や、最低限の確認の流れを共有する必要がある。

一方で、地域によって利用できる社会資源、医療機関や介護事業所との関係、移動手段、家族や近隣とのつながりは異なる。

全国共通の仕組みだけで、地域の支援を完成させることはできない。

共通にするのは、本人の話を起点にすること、必要な情報を確認すること、判断を一人で抱えないこと、決めた理由を残すこと。

具体的な支援は、その地域を知るケアマネジャーが、本人や関係者と一緒に考える。

全国で再現できる土台と、地域や一人ひとりに合わせられる余白。その両方を持つ事業所をつくりたい。

型をつくっても、支援を一律にしない。

そのバランスを現場で確かめ、改善を重ねていくことが、かいごの窓口を広げるうえで欠かせないと考えている。

次回は、全国共通の仕組みを持ちながら、それぞれの地域にある社会資源や人とのつながりを、支援へどう生かすかを考えたい。


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