全国展開奮闘記 #12|地域との関係を、担当ケアマネだけの記憶にしない
居宅介護支援事業所で地域との関係を特定のケアマネジャーだけの人脈や記憶にせず、連携経緯、約束、次の行動を事業所の知識として残す方法を紹介します。
執筆:かいごの窓口編集部

前回は、新しい居宅介護支援事業所を地域で孤立させないために、開業前から相談先を増やしていくことを書きました。
地域包括支援センター、医療機関、介護サービス事業所、行政、地域の企業や住民。
一人のケアマネジャーだけですべてを解決しようとせず、困る前から話せる相手を増やしておく。その関係が、最初のケアマネジャーを支える土台になります。
一方で、関係が増えるほど新しい課題も生まれます。
誰と何を話したのかが、担当者本人にしか分からない。相手と交わした約束が個人の手帳に残っている。担当者が休むと、事業所として返答できない。退職や異動があると、それまでの関係が途切れてしまう。
地域との関係は、人と人がつくるものです。
だからこそ、その関係を管理表の項目へ置き換えるのではなく、相手との経緯を大切にしたまま、事業所の知識として残す必要があります。
今回は、1号店の立ち上げで考えてきたことを土台に、地域連携を特定の人だけの経験で終わらせない方法を書きます。
人脈がある人へ任せるだけでは、働きやすい職場にならない
居宅介護支援事業所を立ち上げるとき、地域で経験を積んだケアマネジャーの存在は大きな力になります。
相談できる医療機関を知っている。各サービス事業所の特徴を理解している。地域包括支援センターとの関係がある。制度の案内だけでは分からない、地域での実際の動きを知っている。
その経験を大切にすることは必要です。
しかし、「地域のことは経験のある人に聞けばよい」という状態にしてしまえば、その人の負担は増え続けます。
- 新しい相談がすべて一人へ集まる
- 休みの日にも連絡が入る
- 他の職員が自分で動けない
- 引き継ぎに多くの時間がかかる
- 拠点が増えても同じ方法を再現できない
頼られる人を増やすのではなく、チームで関係を支えられる状態をつくる。
全国へ拠点を広げるのであれば、最初の段階から向き合うべき課題だと考えています。
残したいのは、連絡先の一覧だけではない
地域連携の情報を共有しようとすると、最初に連絡先一覧をつくることがあります。
事業所名、担当者名、電話番号、メールアドレス。
もちろん必要な情報です。
ただ、それだけでは実際の連携には足りません。
知りたいのは、その人や事業所と、これまでにどのような話をしてきたかです。
- どのような相談に対応してもらったか
- 相手が困っていることは何か
- 連絡しやすい方法や時間帯はあるか
- こちらから何を確認すると約束したか
- どこまで話が進んでいるか
- 次に誰が、いつ連絡するか
連絡先は、関係の入口です。
経緯と約束が残って初めて、担当者以外の職員も相手を尊重した対応ができます。
「会った記録」ではなく、「次に動ける記録」を残す
記録を増やすだけでは、ケアマネジャーの負担になります。
「○月○日、挨拶に訪問した」という事実だけを残しても、次の人が何をすればよいか分かりません。
地域とのやり取りを残すときは、最低限、次の四つを意識します。
1.話した目的
開業の挨拶、利用者支援に関する相談、地域課題の聞き取り、共同で行う取り組みの相談など、何のために話したのかを残します。
2.相手から聞いたこと
こちらが説明した内容だけでなく、相手が感じている課題や希望を残します。
3.約束したこと
資料を送る、担当者へ確認する、次回の会議で共有するなど、こちらと相手の双方が約束したことを明確にします。
4.次の行動
誰が、いつまでに、何を行うかを決めます。
長い文章を残すことが目的ではありません。
担当者が翌日休んでも、別の人が相手との経緯を確認し、約束を守れることが重要です。
個人のメモから、事業所の共有情報へ移す
関係づくりの最中には、手帳、名刺の裏、個人のスマートフォン、チャットなど、さまざまな場所に情報が残ります。
すべてを最初から一つに統一しようとすると、運用が重くなります。
まずは、事業所として次の行動が必要な情報だけでも、共有できる場所へ移します。
- 相手への返答が必要なこと
- 複数の職員が知っておくべきこと
- 利用者支援に関係すること
- 今後の地域連携で再び使う可能性があること
- 相手との約束に関わること
個人の気づきや、人と人との温度まで形式化する必要はありません。
ただし、事業所として守るべき約束や、支援へ影響する経緯は、個人の記憶だけに残さないようにします。
共有する範囲を決める
地域連携の情報には、利用者さんの個人情報や、相手から非公式に聞いた内容が含まれる場合があります。
何でも共有すればよいわけではありません。
- 利用者支援の正式な記録として残す内容
- 事業所内で連携のために共有する内容
- 管理者だけが確認する内容
- 本人の同意なしに広げてはいけない内容
- 記録せず、個別の相談として扱う内容
この区分を曖昧にすると、情報を残すこと自体への不安が生まれます。
誰が何を見られるか。何の目的で残すか。どの記録へ保存するか。
最初の拠点から基準をつくり、運用しながら修正していきます。
週に一度、地域との約束を確認する
情報を残しても、見返さなければ約束は抜けます。
そこで、週に一度でも、地域とのやり取りから「次に行うこと」だけを確認する時間をつくります。
- 返答期限を過ぎているものはないか
- 担当者が休んで止まっているものはないか
- 一人だけが抱えている相談はないか
- 別の職員にも知ってほしい地域情報はないか
- 今後、改めて話を聞きたい相手はいるか
長い会議にする必要はありません。
進んでいない理由を責めるのではなく、誰か一人へ集中している仕事を見つけ、チームで支えるために行います。
CareSpaceで、経緯と次の行動をつなぐ
CareSpaceは、人と人との関係をシステムへ置き換えるものではありません。
地域へ出向き、相手の話を聞き、信頼を積み重ねるのは人です。
そのうえで、トークルームで共有した内容を記録へつなぎ、関連する書類をケースファイルへ整理し、担当者以外も必要な経緯を追えるようにする。AIを使う場合も、長い記録から次の確認事項を見つけやすくし、人が判断するための準備を助けます。
一度聞いたことを探し直さない。同じ内容を別の場所へ書き直さない。担当者が休んでも、相手との約束が止まらない。
仕組みが人の関係を支える状態をつくります。
現在地|一号店の経験を、次の地域で再現できる形へ
かいごの窓口の一号店は、完成した事業モデルをそのまま地域へ持ち込んで始まったわけではありません。
構想を地元企業へ伝え、なぜ居宅介護支援事業所をつくりたいのか、ケアマネジャーがどのように働ける場所にしたいのかを話し、一緒に立ち上げました。
その過程で生まれた関係や学びを、「最初に関わった人たちだけが分かっている話」にしないことが、これから必要になります。
誰と話すべきかという名簿を全国へ配ることではありません。
地域の話を聞く。相手の課題を知る。約束と次の行動を残す。特定の人だけに連絡を集めない。週に一度、止まっている関係を確認する。
この考え方を共通の土台にしながら、それぞれの地域で関係をつくっていく。
地域を知る人の経験を尊重しながら、その人だけに背負わせない。
それが、ケアマネジャーが安心して働ける事業所を全国へ広げるために必要だと考えています。
次回は、地域との関係や仕事の進め方を、新しく入ったケアマネジャーへどのように引き継ぐかについて書きます。
地域との関係を一人で抱えず、チームで支援できる居宅介護支援事業所に関心がある方はこちら。
地域でかいごの窓口を一緒につくることに関心がある方はこちら。
かいごの窓口で働くことに関心がある方へ
現在ケアマネジャーとして働いている方も、資格を持ちながら別の仕事をしている方も、まずは仕事内容や働き方を知るところからで大丈夫です。
