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全国展開奮闘記 #16|判断ログを「迷ったときに戻れる共通基準」へ育てる

山形市内2拠点で積み重ねる判断ログを、答えを固定するマニュアルではなく、迷ったときに戻れる共通基準へ育てる方法を紹介します。

執筆:かいごの窓口編集部

全国展開奮闘記 #16|判断ログを「迷ったときに戻れる共通基準」へ育てる

前回は、迷った判断を「短い判断ログ」として残す方法について書きました。

何について迷い、どんな事実と意向を確認し、なぜその結論を選び、次に誰が確認するのか。結論だけでなく、判断の骨組みを短く残します。

今回は、増えてきた判断ログを、現場を縛るマニュアルではなく「迷ったときに戻れる共通基準」へ育てる方法を考えます。

かいごの窓口は、現在、山形市内で二つの居宅介護支援事業所を運営しています。

拠点が二つになると、似た相談でも、本人・家族の生活、地域資源、連携する事業所との関係によって判断が変わることを改めて感じます。

1号店でうまくいった答えを、そのまま2号店へ配ることはできません。

共有したいのは答えではなく、「何を確認し、どこから相談するか」です。

共通基準へ育てる第一歩は、結論と確認事項を分けること

例えば、サービス利用回数の変更について相談があった場合です。

「この状態なら回数を増やす」と結論だけを決めれば、本人の希望や生活状況が違うケースにも同じ答えを当てはめることになります。

一方で、毎回ゼロから考えれば、ケアマネジャーが一人で迷い、管理者へ質問が集まります。

共通にするのは、次のような確認の視点です。

  1. 本人は今の生活をどう捉えているか
  2. 家族は何に困り、何を心配しているか
  3. 状態変化は一時的か、続いているか
  4. 現在の支援でできていることは何か
  5. 別の方法で目的を満たせないか
  6. 誰と、いつ再確認するか

確認する視点はそろえる。結論は、その人と地域に合わせて考える。

これが、現場を縛らない共通基準です。

判断ログを三つへ分類し、共通基準へ変える

判断ログが増えてきたら、週に一度、一つだけ取り上げ、次の三つへ分けます。

1.共通手順

法令、期限、確認先が明確で、同じ順序で進められるものです。

例えば、特定の書類の提出期限や、事故発生時の初動連絡などは、迷わず動ける短い手順へ変えます。

2.共通の確認項目

答えは毎回変わるものの、見るべき事実が共通するものです。

本人・家族の意向、状態変化、代替案、再確認日などをチェック項目にします。

3.事例

地域性や個別性が高く、一つのルールへ固定できないものです。

何を大切にし、どの条件で判断が変わったかを残し、次の人が考える材料にします。

すべてをマニュアルにしないことが重要です。

マニュアルへ入れないものを決める

次のような判断を、一律の答えにしないようにします。

  • 本人と家族の意向が異なる場面
  • 安全と本人らしさの両方を考える場面
  • 地域資源の有無によって選択肢が変わる場面
  • 関係機関との信頼関係が影響する場面
  • 本人の生活史や価値観が強く関わる場面

こうした内容は、確認すべき視点と相談基準を共有し、結論は個別に考えます。

1号店と2号店の間で、共通基準を更新し続ける

全国展開を考えると、本部や先にできた拠点から、後からできた拠点へ情報を渡す構造になりやすくなります。

しかし、2号店で見つかった新しい地域資源や、別の連携方法、現場で使いにくかった手順は、1号店や本部へ戻す必要があります。

流れは一方向ではありません。

  1. 各拠点で判断ログを残す
  2. 週に一つ振り返る
  3. 手順・確認項目・事例へ分ける
  4. 他拠点で使えるか確かめる
  5. 違いがあれば基準を更新する

これを繰り返します。

共通基準を更新する5つの質問

ログを振り返るときは、次の5つを確認します。

  1. なぜこの判断に迷ったのか
  2. どの情報が足りなかったのか
  3. 次回も管理者へ上げる必要があるか
  4. 共通に確認できることは何か
  5. 地域や本人によって変える部分は何か

誰が正しかったかを評価する場にしません。

判断しづらかった理由を、人ではなく情報、権限、相談経路、地域資源から探します。

本部がそろえること、地域に残すこと

本部が共通にするものには、次があります。

  • 法令遵守と情報管理
  • 利用者様の安全に関する初動
  • 虐待やハラスメントなどの相談経路
  • 判断ログの最低限の項目
  • 管理者や本部へ上げる基準
  • 振り返りの方法

一方で、地域に残すものもあります。

  • 地域資源とのつながり方
  • 本人・家族との関係に応じた伝え方
  • 地域の生活文化に合わせた支援
  • 関係機関との具体的な連携方法

土台は共通にし、支援は一律にしない。

全国に増やしたいのは、同じ答えを返す事業所ではない

かいごの窓口が全国へ広がるとき、同じロゴ、同じ書類、同じ手順だけを増やしたいわけではありません。

利用者様とご家族の暮らしを見ながら、自分たちで考え、迷ったときには一人で抱えずに戻れる基準を持つ事業所を増やしたいと考えています。

山形の二つの拠点で出た判断を、一方の正解として押しつけない。

それぞれの違いを持ち寄り、共通にすべきことと、地域に残すことを更新し続ける。

その小さな循環を、全国展開の土台にします。

次回は、共通基準を更新するときに「誰が決めるのか」。本部と各拠点の役割分担について書きます。


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